2011年 04月 24日

あいつ

歩いているときに目に入るすべてのものをつぶやきながらだと、本当に口に出したいものがなかなか頭に浮かんでこない。ゴミ箱・看板・男・女・横断歩道・空・不動産・エステ・美容院・話してる人・ぼくを横切った人・今の人は僕のことを「今僕のことを横切った人だな」なんて思っているだろうか。思っていたら、どうしよう。僕もおんなじこと思っていたと伝えるべきだろうか…おんなじ感動を分かち合えるだろうか。だいたい「きもちわるい!」なんてすぐ逃げられるに決まってる。あいつだってぼくと同じこと考えていたくせに。ちゃんと相手に伝えようとした僕のほうがあいつよりはるかに頑張っている。あいつはたぶんこれから先「あの人におんなじこと思ってるよ!って言えなかった。そんな気分じゃなかったし、いや、そもそも言える勇気なんて僕は持ち合わせていなかった。あいつのほうが僕よりはるかに頑張っている…!」と、思い悩むに決まっている。その苦しみは人一倍わかる僕だからこそ、あいつの気持ちを慮ってやれるのだ。そういうところからも、僕はあいつよりも勇気や思慮深さがあるといえる所以だと考えている。ぼんやりしながら歩いていると、回りの風景なんか頭に入ってこない。当然、目に入ったものを口に出して歩くなんてことも、僕が意識している範囲内ではしていないはずだ。もしも僕の横に僕の挙動をしっかととらえて「今目に入ったものを口に出して言うなんてこと考えてなかったでしょ!」といってくれる人がいるとしたら、それは当たっているといわざるをえない。そんな人間がいたら…というもしもの世界の話だ。そんなことを考えながら歩いていたら、突然凶暴なトラックが襲いかかり、四肢を乱暴にむしりとっていった。終わり。
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by ozzaken | 2011-04-24 07:41 | 日々


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